『──そういうわけだから、私は高校を卒業したら彼と結婚するわ。お父様が苦労して話をつけた御園さんとの婚約話を蹴るのは悪いけど、鷹司だって政略結婚の相手だったと考えても悪くないでしょ?』



お父様は、自分が用意したシナリオの通りにいかなかったことは不服に思うかもしれない。

だから私に向けて嫌味の一つ二つ投げつけられることは予想していた。嫌味は言いつつも、内心ほくそ笑んでいるはずだと思った。

だけど、私の言葉が終わるやいなや部屋に響いたのは、私への嫌味ではなく、パンっと乾いた大きな音だった。



『どうやって娘を誑かした、この詐欺師が』



目の前で繰り広げられた信じがたい光景。

お父様は、怒りで肩を上下に震わせながら鷹司の頬に平手打ちを食らわせていた。




『お前みたいな訳の分からん男にまいをやれるか! 今すぐ出ていけ!』


『ちょっとお父様!?』


『まい、お前もお前だ。こんな得体の知れない男のどこがいい? 馬鹿な娘だとは思っていたが、想像を絶するまでの馬鹿だったか』