「貴方は私に、愛されるヒロインになれないのなら愛される悪役になれって言ったわね。『愛され系悪役令嬢化計画』なんて名前を付けて、色んなミッションを私に与えてきた」


「はい」


「でも私、“皆から”愛されたいなんて今はもう思ってないの。貴方だけが愛してくれるのなら、ヒロインだろうが悪役だろうがどうでもいい」




皆から愛されるヒロインに執着していた女とは思えないそんな言葉を、私ははっきりと言い切った。

それから大きく息を吸って、ふっと表情を和らげた。




「良いわよ、あんたのこと選んであげる。その代わり……次黙って私の前から消えたら、今度こそ許さないからね」


「……承知いたしました。二度と貴女の前からいなくならないことを誓います。むしろ離れろと言われても離れてさしあげませんので、ご覚悟を」




鷹司は重ねていた私の手をそっと持ち上げ、優しく唇を落とした。