そして実際、俺が離れていった後に失脚した者も少なくない。御園雄一のように、与えられた助言をきちんと自分のものにして成功した者ばかりではないのだ。


かつて兄が仕え、そして兄を殺した男も、そんな中の一人だった。

噂を聞きつけて俺を手元に置たがったあの男は、鷹司という決して多くない苗字にもかかわらず、俺の名を見ても兄のことを思い出すことはなかった。

溢れ出る憎悪を抑え込み、彼の執事として働いた期間はまさに地獄の日々。


だが、あの男を破滅させるのはそう難しくなかった。

あの兄が過労死するほど劣悪な労働環境を作っていたことから何となく想像できていたが、あの男の経営する会社は、法に抵触するようなことを平気でやっていた。

そこに漬け込み、仕えている間は大人しく助言を与えたりもしながら、協力者を仕込んで内部告発させた。あの男は、頼り切っていた執事が裏切っていただなんて、今でも想像していないだろう。