「ねえ、聞いてもいいかしら」


「何ですか?」


「どうして貴方はそこまでしてくれるの?」




近頃ようやく慣れてきた右側の助手席に座りながら、私は御園さんに尋ねる。

ずっと不思議ではあったけれど、鷹司の行方を追うことに必死で、今まで聞けていなかったこと。




「仮にも婚約者になるかもって女が、他に好きな男がいるから会いに行きたいって言っているのよ? 顔に泥を塗られたって言って、お父様に怒鳴り込んでも文句を言われない立場だと思うの」


「あはは、さすがに岸井社長の元へ怒鳴り込みに行く勇気はないですね」


「例えばの話よ」


「まあでも、どうしてと言われますと……ただの自己満足ですとしか」




信号で車が止まると、御園さんは缶コーヒーで喉を軽く潤わせてから話し出した。




「僕には、昔から可愛がってきた従妹(いとこ)が一人いました。ですが数年前、親族内でトラブルがあって、彼女は立場が非常に悪くなってしまったんです」