『一年間絶対に契約を解除しないという約束、守ることができず申し訳ございません』




もうすっかり見慣れた、鷹司の書いた癖のない文字。

たったそれだけの短い言葉が、私に残された全てだった。


それを見た瞬間、頭の中が真っ白になって。

前日の出来事がまるで夢か何かだったような気がした。

ただ首筋に残った赤い痕だけが、思いが通じ合ったあの瞬間が現実のものであったことを教えてくれていた。



私は膝から崩れ落ちて、呆然とするしかなかった。



……だけど、その後すぐに立ち上がった。湧き上がる怒りからくる震えが止まらなかった。


この私を置いて勝手にいなくなるなんて何事!? 見つけたらただじゃおかない。




「──で、この二週間色々と伝手を使ってあいつの行方を調べ上げてやったの。鷹司、今はどうやらニューヨークにいるらしいわ。……ふふ、約束より一ヶ月も早く私の前から消えてまで仕えたい人が向こうにいたのかしらね♪」


「きっしーさん、笑顔が怖いよ……」