「雄一様がお嬢様の婚約者候補だと旦那様から知らされたとき、貴女からの好意を見込めない以上もういい加減引き下がるべきなのだと思いました。『これまでの態度が全て演技だった』と思わせるため、婚約話に僻み一つ言わず賛成もしました。……心にもないことを言いすぎておかしくなりそうでしたよ」


「じゃあ……私のことを好きだとか、いろいろ言ってたのは……ずっと、本気だったってわけ……?」


「今さら無理があるかと思いましたが……まんまと騙されてくださいましたね。その上、もうすっかり雄一様に夢中のようで。自分勝手な話ですが、はらわたが煮えくり返りそうです」




そう言い捨てた鷹司は、大きく息をついてベッドの端に腰を下ろした。

それから、今度はどこか乱暴に私の顔へ手を伸ばして、くいっと顎を持ち上げる。




「ですからどうか、先ほどの非礼は大目に見てもらえませんか。正直いろいろと限界だったのですよ。一応、唇には触れないようにしましたし」


「……あんなことして、許せですって?」




開いた口が塞がらない。

私は鷹司の手を力任せにつかんで起き上がった。