鷹司がゆっくりと視線を上げて、私と目を合わせる。

その目は、驚きと緊張の色に染まっていた。




「何……今の……?」


「お嬢様……お目覚め、でしたか」




私に負けず劣らずのかすれた声で呟く鷹司。

手を引っ込めて、無理につくったような笑みを浮かべる。




「何か、温かい飲み物でもお持ちいたしましょうか? ほうじ茶のミルクティーなんていかがでしょう」


「いいから答えなさい。今何したの?」


「……」




私がまっすぐ顔を見たまま言えば、彼は根負けしたようにすっと目を逸らした。




「不快な思いをさせてしまいましたね。大変申し訳ございません」


「私あんたのことがわからない。ねえ、私のことが好きだっていうのはそういう“設定”だったんじゃないの? 演技だったんじゃないの? だから婚約者候補の御園さんに嫉妬の一つも見せなかったんでしょう? こんな寝込みを襲うような真似、まるで……」




まるで本当に、私に恋愛感情を抱いているみたいじゃない。