次に意識がはっきりとしたとき、私は自室のベッドの上にいた。

少し寒い気がして、もぞもぞと布団を引き上げる。




「気分はいかがですか、お嬢様」




その声の方に目を向けると、鷹司が静かに立っていた。

私が目を覚ましたことに気が付いて、ベッドの傍らへとやってくる。




「……服、あんたが着替えさせたの? 今日、山田さん休みじゃなかった?」




着ている服が制服からネグリジェに変わっていることに気が付いた私は、痛む喉に顔をしかめながら言う。

ちなみに山田さんとは、岸井家で長年働く、いろいろ厳しくて私はちょっと苦手なメイド。唯一の女性の使用人だ。




「申し訳ございません。さすがに制服のままお休みいただくわけにいかないと思いまして」


「……ばか」


「ご安心ください。どうやらわたくしは、自分で思っている以上に強靭な理性を持ち合わせているらしいのです。いろいろ危なかった瞬間はたったの五回だけでした」