「きっしーさん、顔色悪いよ? 保健室行った方が良くない?」


「大丈夫よ。気にしないで」


「でも……」




御園さんとの約束さえなければ、保健室に行くどころかさっさと迎えを呼んでいただろう。

それでも気力で耐えていた。……放課後を告げるチャイムが鳴るまでは。



鞄を持って立ち上がった瞬間、ぐらりと世界が歪んだような気がした。

倒れそうになった私を受け止めたのは、奏多くんとおしゃべりに興じていた葉澄だった。




「きっしーさん!? 大丈夫!? 柳沢くん大変、きっしーさんが! 熱あるよ!」


「落ち着いてハス。俺、保健室に先生呼びに行ってくるから」


「わかった。私はこの前鷹司さんと連絡先交換しておいたから、メッセージ送ってみるね」




いったいいつどのタイミングで交換したのよ……とぼんやりする頭で思ったけれど、声にする元気はなかった。


代わりに静かに目を閉じて、意識を保つことを諦めた。