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その日は朝から少し体調がおかしい気がした。

頭が少しぼーっとして、声を出すと喉が痛む。




「お嬢様、今日は学校をお休みなさってはいかがですか?」




主の機微に聡い優秀な執事鷹司はそう言ったけれど、私は「大袈裟ね」と首を振る。




「熱があるわけでもないし、それに今日の放課後は……」


「雄一様とお出かけの約束をなさっている、ですか?」


「そうよ。フレンチのレストランに連れていってくれるそうだから、一旦帰って着替えるわ。良さそうな服を見繕っておいて」




御園さんとは、あれからも何度か一緒に出掛けている。

忙しい身である御園さんが私と友好を深めるために時間を作り出してくれている。体調が悪い気がするという程度で中止にするわけにはいかない。

大丈夫。学校に着く頃にはきっと良くなっている。


……なんて言い聞かせていたけれど、残念ながら実際は悪化する一方だった。