「まあ婚約者候補の僕としては、他の男性の話を嬉しそうにされるとちょっと寂しいですけど。……なんて噂をすれば、お出迎えですね」




いつの間にやら、屋敷のすぐそばまで帰ってきていた。

門の前には一人佇む鷹司の姿。車の音に気が付いたのか、彼はこちらに体を向けた。




「今日は楽しかったです。またお誘いしても良いですか?」


「ええもちろん。じゃあまた」




私は微笑みながら答えて車を降りる。


御園さんと話すのは本当に楽しかった。

……この人に恋愛感情を抱けたらいいのに。




「お帰りなさいませ、お嬢様」




そう思うのに、こうして私を出迎える執事への気持ちがどうやっても消えなくて。

コントロールできない自分の気持ちが腹立たしく、どうにか自分の脳を騙そうと……嘘をついてみた。




「ねえ鷹司。貴方の言う通り、御園さんは本当に素敵な方ね。あんな方が未来の旦那様だなんて、私は幸せ者だわ」




既に辺りが暗くなっていたせいで、このときの私はそれを聞いた鷹司がいったいどんな表情をしていたのか、気付くことができなかった。