純文学を嗜むなんて勘違いされてはたまらない。

そう思って慌てて言うと、御園さんはくすくすと笑った。




「僕も読書は好きですけど、まいさんの言う『高尚な本』はそんなに好きじゃないですよ。実はミステリーやサスペンス系の小説が好きです」


「ミステリーなら私も時々読むわ!」


「本当ですか? よく探偵の気分になって犯人を当ててみようとしたりもするんですけど、あれが全然わからないんですよね」


「そうなのよね……。そういえばずっと疑問なのだけど、小説に出てくる探偵と実在の探偵って、どうしてあそこまでかけ離れているのかしら」


「はは。小説の名探偵は浮気調査やペット探しなんてしませんもんね。あっ、でも僕、一度本当に警察に協力して事件を解明する探偵に会ったことありますよ」


「ええっ、嘘!?」




私たちは、会ったのが二度目だとは思えないほどに話が弾んだ。

後半はもうほとんど作品を見ることを忘れ、ただしゃべりながら歩くだけになっていた。