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「お嬢様、朝でございます……っと、もうお目覚めでしたか。近頃ずいぶんと寝起きがいいようで」




朝。

部屋に入ってきた鷹司は、既にベッドから出てドレッサーの前に座っていた私を見て眉をひそめた。




「ん。髪だけ何とかして」


「はい」




なるべく短い言葉だけを使う。

彼が慈しむような手つきで私の髪を触るのも、できるだけ意識しないように軽く目を閉じる。



鷹司のことが好き。

17年間生きてきて、ここまで自分自身の気持ちを認めたくないと思ったのは初めてだ。


鷹司との契約期間は残りあと二カ月。

可能な限り鷹司との関わりを減らして、この想いには目を背けていくと決めた。




「じゃあ行ってくる。八坂に運転してもらうから、貴方は来なくていいわ」




これまで車の運転を鷹司がすることもあったし、そうでなくても朝の準備が終わらなかったときに続きをしてもらったり、課題や小テストの対策をしてもらったりするために同乗してもらうこともあった。