鷹司が私に恋愛感情を抱いているだなんて、妄言もいいところだ。



彼は、出会ったとき既に奏多くんへの恋に破れていた私を憐れんでいた。だから私に仕えるにあたって自分に「お嬢様に恋をしている」という設定を付け加えたのだろう。

憐れんで、というよりは、私の心を開くのにそれが手っ取り早いと考えたのかもしれない。



……その可能性はずっと頭の隅にあった。

だけど、彼が私への好意を匂わせる発言をするたび、私は口では否定しつつも、心のどこかでそれが本心ではないかと期待してしまっていた。

まんまと策略にはまっていたわけだ。




「馬鹿すぎるでしょう私」




ホワイトデーのお返しにもらった香水瓶を馬鹿みたいに喜んだり。彼が似合うと言ってくれたというだけで、馬鹿みたいに青紫の服ばかり集めてみたり。


ぎゅっと胸の辺りを押さえる。

奏多くんを好きだったときみたいな、甘くてふわふわとした感情じゃないから今まで気が付かなかったけれど。




胸が詰まったように苦しいのは、間違いなく彼に恋愛感情を抱いてしまったことが原因。




もう、そう認めざるを得なかった。