帰りの車は地獄のような空間だった。

葉澄が必死に原麗華の話で場を繋ごうとしてくれたけれど、それに答える気にもなれなくて、私はずっと外を見ていた。葉澄を家の前まで送り届けたとき、あからさまにほっとした顔をされたので、少し胸が痛んだ。

だけどこっちの事情も事情なので許してほしい。




「鷹司。私に何か言うことは?」




私がようやく口を開いたのは、パーティードレスから着替えもせず、自室の椅子にドカッと腰を下ろした直後のこと。




「婚約者の話について黙っておりましたこと、大変申し訳ございません」


「……今日お父様は?」


「海外出張中でございます」


「今すぐ電話を繋いで」


「スケジュールの関係で難しいかと」




大きく舌打ちをした。

どうしようもなくイライラする。

そのイライラする最も大きな要因は、自分の知らないところで婚約の話が出ていたからじゃない。鷹司がお父様から話を聞いていながら黙っていたことでもない。