私の頭に、黒っぽくて弾力のある食材とフランスの蒸留酒が浮かぶ。




「こんっ……」




……まあ待ちなさい。まず一旦落ち着かないと。




「お料理は洋食ばかりだし、アルコールなしのパーティーだから、こんにゃくもコニャックもなかったと思うわ」


「はい?」


「今こんにゃく的な言葉が聞こえたものだから」


「婚約のことですか?」




反射的に耳をふさいだ。


だめよ私、落ち着いて。ほら、深呼吸。

聞き間違いではなかったようだけど……ほら、たとえば、「こんやく」に頭の悪い私には知らない意味があるのかもしれないわ。




「こ、婚約というのは、結婚の約束をするという意味の言葉なのかしら? 違う? 違うわよね?」


「……あの、その反応を見た感じだと……もしかして、岸井社長から何も聞かされていませんか……?」