御園という名前を聞いて、記憶に引っかかるものがあった。
「御園グループの代表がとても若くて優秀な方だというのは聞いたことがあったけれど、本当のことでしたのね」
不動産会社をはじめ、色々と手広く商売をしている御園グループ。
何年か前に代表が交代し、一時は衰退が危ぶまれる声もあったが、若き代表の手腕により今は以前の勢いを取り戻した……という噂はどこかで聞いた。
私の言葉を聞いて、彼ははにかんだ様子で頬をかく。
「今日ずっと話しかける機会を窺ってたんですけど、どうもタイミングが合わなくて。ようやくお話しできて嬉しいです」
「あら、私に?」
「はい」
御園雄一はすごくすごく穏やかな声で……
思いがけない爆弾を落とした。
「まいさんは、僕の婚約者なんですから。きちんと挨拶させて頂かないと」