「ミルクプリンというか、ブランマンジェね」




どこかで食べた覚えのあるスイーツだったので、私はすかさず訂正する。




「ぶらん……何て?」


「ブランマンジェ。フランスのスイーツよ」


「へえ」


「お嬢様。こちらブランマンジェではなくババロアでございます」


「……これはババロアっていうのよ。覚えておきなさい」




知ったかぶりはするものじゃない。

とはいえ、葉澄はスイーツの名称なんてどうでもいいようで、特に興味なさそうにまた「へえ」とうなずくだけだった。


……そんな葉澄の手が止まったのは、二つ目のババロアを半分ほど食べた頃だった。




「え、嘘……(はら)麗華(れいか)ちゃんだ……」




聞きなれない名前を呟いた葉澄は、驚きに満ちた表情をしている。

彼女の視線を辿ってみると、そこには談笑する男女の姿。




「何? 知り合い?」


「そんなわけないじゃん! ていうか、きっしーさん麗華ちゃんのこと知らないの!?」


「だから誰よ」




一般常識のように言われたって、知らないものは知らない。