聞こえた声にはっとして振り返る。

そこには、顔を赤くして後ずさりする葉澄の姿。



……改めて、今の自分の状態を考えてみた。


専属執事と部屋に二人きり。

それだけならまだしも、二人はなぜか抱きしめ合っている。

顔も近いから角度によってはキス……してるように見えたり……とか……。




「誤解よ!」




私は鷹司の腕の中でじたばたしながら訴えた。




「ていうか、あんたは何でここに来たのよ!?」


「遅くなってきたし、そろそろ帰る準備しようかと思ってきっしーさんのこと探しに来たんだけど……あの、ごめん、二人がそういう関係だってこと知らなくてっ……見なかったことにして出直すから……」


「だから誤解だって言ってるでしょう! そして鷹司はもう本当にいい加減その手を離しなさい!」


「おや、先ほどはお嬢様の方から『抱きしめてほしい』とおっしゃっていたのに」


「言ってないわよ! しれっと嘘ついて話を拗らせないで!」


「主従関係で禁断の恋、 私は応援するよきっしーさん!」


「葉澄、あんたも話聞きなさい。目キラキラさせてんじゃないわよ」