「そういう貴方は口の下にほくろがあるわよね。目の下のほくろを泣きぼくろっていうなら、口の下なら何ていうのかしら。食べこぼしぼくろとかかしら」




私にできる抵抗といえば、適当なことを言ってこの妙に甘ったるい雰囲気を壊すぐらいしか思いつかない。




「相変わらずお嬢様の発想は面白いですね」


「じゃあもうちょっと面白いって思ってそうな顔しなさいよ。そんな真顔だとすべったみたいじゃない」


「ではそうですね……正直今回は100点満点中42点ぐらいの発想でしょうか」


「まじめに採点しろとも言ってないけど。ていうか低いわね」


「前回化学のテストでお嬢様がとった点数よりは高いですが」


「ぐっ……」




よく覚えてるじゃない。


でもどうにか甘ったるい雰囲気からは抜け出せた……。


屈辱に唇を噛みながらもそう思ったときだった。


がたん、とドアの開く音がした。




「あっ……ごめんなさい、私は何も見てないから!」