「ところでお嬢様、まだお勉強中のはずでは?」




慌てふためく私とは対照的に、鷹司は落ち着いた声で尋ねてくる。ただし手は私の背に回したままだけど。




「制服のままだったから着替えようと思っただけよ。で、あんたがお茶のお代わりも用意しないで消えるから、ついでに探しにきたの! 」


「そうでしたか。それは失礼いたしました」


「いいからもう離しなさい!」


「お断りします」




鷹司はそう言って、抱き寄せる手にさらに力を込めた。


私にはもう、そんなこいつを睨みつける気力も残っていない。

涙目になりながら鷹司を見ると、彼は熱を帯びた瞳で私を捉えていた。




「お嬢様は左目の下に泣きぼくろがありますね」


「え、ええ……ちょっと気になるのよね」


「非常に魅力的だと思いますよ」


「そ、それはどうも……ありがとう……」




ああもう。

どうして私がこんな執事相手に、ここまで動揺させられなきゃならないのよ。