そんなことを思っていたその瞬間だった。




「きゃっ」




強い力で手を引かれた。


バランスを崩した私は鷹司の上に倒れ込む。

どうにかして顔を上げると、先ほどまでゆっくり観察していた鷹司の整った顔が至近距離でこちらを見ていた。




「失礼。いつ襲ってくださるのかとわくわくしておりましたのに、なかなかその気配がないので我慢できず」


「は、なっ、い、いつから起きてたの!?」


「お嬢様が扉を叩いたあたりから」


「じゃあ返事しなさいよ!」




叫びながら、体温が急上昇していくのがわかった。

もしかしてもしかしなくても……

鷹司が寝ているものだと思い込んで呟いた独り言も聞かれていた……ってこと?


……。




「忘れなさい」


「何をでしょうか」


「しらばっくれないで!」




ずっと専属執事でいてくれたらいいのに。

自分の中でいつの間にか芽生えていたその気持ち。気付いたそばから聞かれてしまうなんて。