そしてこれまた音をたてないようにそっと彼に近づき、隣に腰を下ろした。

……正直、自分でも何をしたかったのかわからない。



ただ静かに座って、鷹司の綺麗な横顔を見つめていた。




「……もうあと、3か月なのね」




鷹司が私の専属執事でいるのは、一年間だけ。最初にそう契約したらしい。

そのうちの9か月がもう過ぎたのだと、先ほど口にしたことで突然実感が湧いた。


最初は、お父様が勝手に決めた専属執事なんて絶対にいらないと思っていたのに。

いつの間にか、この奇妙な執事が隣にいることが当たり前になっていた。何故か、これから先も一緒にいてくれるような気がしていた。




「このままずっと、私の専属執事でいてくれたらいいのに」




ぽろりと漏れたのは、紛うことなく本音だった。

私はそっと手を伸ばして、鷹司の髪に触れてみる。


さらりとした感触が指を通る。


今度はちょっと顔を近づけてみる。

切れ長の目に薄い唇。これだけ近くで見ても、実にきめの細かい白い肌。

普段ここまでしっかり観察することはないからちょっと変な感じ。