制服から着替えるために部屋に向かっていたけれど、ふと気まぐれで方向を変えた。


向かう先は一階の奥にある部屋。

そこは私たち一家があまり出入りしないため、使用人たちが休憩時間に滞在するために使っている部屋がある。


もしかしたら鷹司も、今はそこで呑気に休憩しているのかもしれない。

この私を退屈させておいて自分は休憩なんて許せない。いたら紅茶のお代わりとお茶菓子を持ってこさせよう。



私はそう心に決め、部屋の戸を叩く。普段出入りしないせいで微妙に緊張する。


返事はない。

いないみたい……と思いつつ、一応扉を開けてみる。


──すると、思いがけない光景が目に飛び込んできた。



「え、寝てる……?」



部屋に置かれた、私が普段使う物よりずっとずっと質素なソファー。

そこに座る燕尾服の執事は、腕を組みながら静かにうつむいて目を閉じていた。



へえ……鷹司も眠るんだ。

そんな当然のことに驚きながら、私は音をたてないようにしながら部屋の中に入る。