私の指摘に、葉澄は慌てたようにぶんぶん両手を振る。




「いや、あの、違って……柳沢くんはとりあえず甘くしとけば間違いないっていう簡単な好みだから……」


「ハス、言い方」


「それに、それを言ったらきっしーさんこそ! あの執事さん、きっしーさんの分は何も聞かないで当然のようにミルクだけ入れてたよね。きっしーさんのことなら何でもわかってるって感じだった!」




葉澄はこのままではさらにからかわれると察したのか、話題を私のことに変えてくる。

私は肩をすくめて答えた。




「あれは執事だから当然なのよ」


「うわあ、信頼関係だね……」


「あの執事……鷹司さんだっけ? 彼は岸井さんに仕えて長いの?」




今度は奏多くんまで興味を持ったように聞いてきた。




「長くないわよ。まだ出会って9ヶ月程度だもの」




最初に会ったのが去年の秋頃だったから……と指折り数えて、私はふと動きを止めた。

そう、9か月。あれからもう、そんなに経っている。