だけど鷹司は、『ヒロインに財力面で格差を見せつける。いかにも悪役令嬢でございます』なんてもっともらしく理由を付けてきて。


それで私はといえば完全に納得してしまった。確かによく見るやつだもの。



とはいえ、行きたいとねだられて招待したことはあっても、自分から誰かを家に誘ったことなんて今までなかった。

だから、普通どういう名目で誘うのかがわからなくて。

まさに今日このタイミングを見計らっていたというわけだ。


葉澄と奏多くんは、私の提案に若干驚いたように顔を見合わせている。

一瞬の沈黙の後、葉澄は目をキラキラさせながら、ずいっと顔を近づけてきた。




「行ってみたい、きっしーさんの家! ね、柳沢くん?」


「あ、うん……でも、いいの岸井さん? 迷惑じゃない?」


「わ、私が良いって言ってるんだからいいの! 部屋なんていくらでもあるんだから、一つぐらい荒らしても大丈夫!」


「いや、荒らすつもりはないけど……」




それでも渋っていた奏多くんを、既に乗り気な葉澄と一緒に少し強引に押し切ったのだった。