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二年生初の中間テストが近づいてきたある日のこと。




「あーー! どうしよう! 範囲広すぎる!」




昼休みに後ろの席から聞こえてきた、葉澄の悲痛な声。


追試や補講授業で見かけたりしたから何となく知ってはいたけれど、同じクラスになった約一ヶ月で確信した。

葉澄は学力面で私と同類だ。




「彼氏頭良いんだから教えてもらえばいいじゃない」


「あのねきっしーさん。簡単に言うけど、柳沢くんめちゃくちゃスパルタだからね!」


「ええ? 優しく丁寧に教えてくれそうじゃない、奏多くん」


「まさか! 本気で怖いよ! もう思い出すだけで震えるもん。あれは控えめに言って鬼だよ、鬼!」


「……ハス、誰が鬼だって?」




昼休みや放課後になると毎日のように4組へ顔を出す奏多くんが、いつの間にか葉澄の背後に静かに立って微笑んでいた。


葉澄は顔を引きつらせて、恐る恐る後ろを向く。