「ピアス……そのピアスはいったい何?」




フォーマルな燕尾服などとは明らかに不釣り合いなシルバーのフープピアス。

出会った日から外しているのを見たことがない。


美的感覚も優れている彼は、そのピアスが服装に似合っていないことなど、当然承知しているはず。それなのに外そうとしないのはどうしてなのか。


……ファーストネームも気になるところだけれど、何となくこちらの方が先に聞いておかなければならないような気がした。




「これですか……」




鷹司は存在を確認するように、そっと耳元に触れる。




「このピアスは、わたくしにとって大切な人からもらった物でございます」


「大切な人?」




心臓がどきりと大きく跳ねた。

何者かに思いを馳せる鷹司の表情が、あまりに切なげだったから。



大切な人、と考えてぱっと頭に浮かんだのは、恋人の存在。


色々と規格外な変態執事だけど、顔は良いのだから過去にそのような存在がいたとしてもおかしくはない。