だけど……何でも簡単に見通す鷹司にとって、わからないことがあるというのは私が考えていた以上に悔しいことだったらしい。

そう思うと、ちょっと楽しくなってきた。


だってこの先、鷹司が私に何かを「教えてくれ」って言うことなんて、そうあるとは思えない。




「まあ、教えてあげてもいいけど……」




私はたっぷりもったいつけながら、振り返って微笑みかける。

そして、彼の服の袖口をつかんでくいっと引き寄せた。




「代わりに、貴方も私の質問に一つ、はぐらかさずに答えなさい」




鷹司の整った顔は、無表情に私を見返していた。

数秒後、少しだけ口角が上がる。




「良いでしょう。何を知りたいのですか?」


「そうね……」




腕を組みながら考える。


この秘密主義の執事に謎は多い。


ファーストネーム。どうして短いスパンで仕える主を変えるのか。以前累が言っていた彼に関する都市伝説の真偽。


私は迷った末、この質問を口にした。