「降参です。お嬢様がお好きな香りを、どうか教えていただけませんか」


「へ?」




間の抜けた声が出たのは、鏡の向こう側の鷹司が少し悔しそうな顔をして見えたから。

そしてそう見えたのは、どうやら気のせいではなかったらしい。




「お嬢様が現在所持している香水、そしてこれまでの購入履歴を調べさせていただきましたが、フローラル系ウッディ系シトラス系と様々。種類はオードトワレが多いようなので、強すぎない香りがお好きなのではとは思いますが……」


「ちょ、ストップストップ。何ちゃっかり私の所持品漁ってんのよ。てか購入履歴を調べたってどうやって? ネットショッピングで買ったわけではないはずだけど」


「調査方法は企業秘密でございます。ああでも、心配なさっているように、お嬢様の私物を勝手に漁ったわけではございません。そこはご安心を」


「あんたの普段の行いを考えると信じられないわ」