「良かったですね、お嬢様」


「……何が?」


「新しいクラス、どうやらお嬢様にとって一番良い結果になったようで」




帰宅後。

お風呂上りの私の髪を整える鷹司は涼しい顔で言った。




「新しいクラスのこと、まだ何も言ってないわよ。どんなメンバーなのかもう調べたの?」


「貴女の表情を見ていれば結果は何となくわかります。……まあ調べましたけど」


「調べてるんじゃない! というか、一年生のときの友達とは全員離れたし、担任は数学教師だし、どこらへんが『一番良い結果』なのよ」




きっちり始業のチャイムと同時に教室へ入ってきた新しいクラス担任は、そこそこベテランの数学担当男性教師だった。目つきが鋭くて怖い顔をした人で、実際に怖いらしい。


その教師を見た瞬間、後ろの席の葉澄が「うへぇ……」と情けない声を上げていたっけ。

……気持ちはよくわかった。数学は私たちの敵だ。だからもちろん数学教師も敵。文系クラスなのに担任が数学教師なのは予想外だった。