「すっかり仲良くなったんですね、殿下。いい傾向じゃないですか」

 エイミーの歌の特訓をはじめて十日余り。

 学園の医務室へ頭痛薬を取りに来たライオネルは、にやにや笑いのウォルターに言われて眉を寄せた。

「何がだ?」

「エイミー様ですよ」

「何を言っている」

「何って、ケビンから仲がよさそうだって聞きましたけど……」

 ケビンとは、ウォルターが学園の常駐医師として離れる二年間、ウォルターのかわりにライオネルの侍従を務めている男だ。

 ライオネルは顔をしかめた。

「勘違いするな。俺は仕方なくやっているんだ」

「仕方なくエイミー様の手作りのクッキーを食べて談笑して、楽しく歌を歌っているんですよね」

(ケビンめ!)

 練習に使っているのは防音室だが、侍従であるケビンは用があるときには出入りを許可している。エイミーも、あの意味不明な歌詞なら音を外さないことがわかったので、聞かれてもそれほど問題にはならないだろうと、立ち入り禁止を解除したからだ。