「…………おい」

「あと十秒」

「さっき五秒って言っていなかったか⁉」

 エイミーの頭上から、ライオネルの「はー」っという長いため息が落ちてきた。

 そこにはあきれ返った響きしかないのに、エイミーはそれが嬉しくて仕方がなかった。

 だって、口では文句を言っても、前みたいに押しのけようとしたりしないから。

(ふふ、幸せ……。殿下、いい匂い……)

 ライオネルにぎゅーっと抱き着いて大好きな香りを胸いっぱいに吸い込んでいると、ライオネルが諦めたようにぽんぽんとエイミーの頭を叩いた。

「もういい、このまま話を続けるぞ」

 週末の今日、エイミーとライオネルはカニング侯爵家のエイミーの部屋で、犯人捕縛計画を煮詰めていた。

 だが、せっかく両想いになれたのに、無粋な話ばかりでは味気ないし面白くない。

 だから隙を見てエイミーはライオネルに抱き着いてみたのである。