「これで問題なさそうだな」

 ピアノの伴奏を止めて、ライオネルは小さく笑った。

 最初はどうなることかと思ったが、エイミーは正しい歌詞でも音を外さずに歌えるようになった。

 あの出鱈目な歌詞で何とか音を覚えさせた後で、頭の中でその出鱈目の歌詞を歌いながら正しい言葉を発生するように訓練を続けると、正しい歌詞でも正しく歌えるようになったのだ。

(こいつは変だが、能力自体は高いんだよな)

 頭の中で違う歌詞で歌いながら、別の歌詞を声に出せなんて、ライオネルが同じことを言われれば大混乱に陥っていただろう。それをわずか数日でマスターしてしまったエイミーは、やはり天才なのかもしれない。

 ライオネルが褒めると、エイミーははにかんだように微笑んで、淑女の見本のような礼をした。

「ありがとうございます、殿下」

「あ、ああ……」

 いつもならわーきゃー騒いで飛びついてくるエイミーが、ただ静かに微笑む様子にライオネルは戸惑いを隠せない。