「それにしても、豹があんなに必死で誰かを追いかけるなんてな」
「ホントだよね。豹くんの新しい一面を見たってかんじ」
「Ω自体そうだけど、運命の番に出会えるなんて奇跡だからね」
みんながニヤニヤしながら話す。
言われてみれば、こんなにも人に執着したのは初めてだ。
俺はαだから、何をしなくても自然と人が寄ってきたから。
「なあ、豹。ずっと探してた運命の番に会ってみた感想は?」
大牙が興味津々で聞いてくる。
「運命の番に出会ったら、本能のまま番になって、死ぬまで一生いっしょにいるものだと思ってた。でも、おたがい本能で求めあっていても、心が相手に向いているかどうかは、どうやら別の話みたいだ」
「それって、どういうことなの?」
美琴が首を傾げる。
「番の契約を結べる最大の条件は、“おたがいの心が通じあっていること”。でも、今の仁愛の心は、俺に向いていない」
「つまり……今の仁愛ちゃんとは番を結べないってこと?」
瑚依が心配そうに顔をしかめた。