「仁愛、俺はさっきの奴らとは違う――」
　

そのまま仁愛の手を取り、俺の両頬に触れさせる。


「――だから、俺だけを見て。俺だけを感じろ」


警戒(けいかい)を解きたくて、まっすぐに仁愛を見つめる。

それでも仁愛は俺から離れようとしていたけれど、俺はそれを阻止するように、仁愛の両手に自分の手を重ねた。


「イヤ……ッ！」


仁愛はまるで絶対に俺に身を委ねないと言わんばかりに、断固として拒否する。

だけど、運命の番を前にして、理性を保つのには限界があるはずだ。


「仁愛、本能に抗うな。余計に苦しくなるだけだ」


そう言いながら、仁愛の額に優しく俺の額を寄せる。


「仁愛、大丈夫だから。本能の赴くままに、俺のことを欲しがれよ」


今にも仁愛の唇が触れそうな距離。

でも、仁愛が望むまで、俺からは何もしない。


仁愛、俺に堕(お)ちてこいよ……。

これ以上、俺を焦(じ)らすな。

我慢できなくなるから。


すると、仁愛は自(みずか)ら俺に抱きついた。