仁愛のことを守れたのはよかったものの、あいつらの匂いが残っている。

今すぐに俺の匂いで上書きしたい。


「仁愛……っ」


仁愛を抱きしめて名前を呼ぶと、甘ったるい匂いがブワッと香り立った。


これは……ヒートか!


その瞬間、ラットが誘発されて、仁愛が欲しくて身体が(うず)いた。


「イヤッ!」


俺のラットに反応しているはずなのに、仁愛は俺の体をドンッと力強く押し返した。


「もう誰も私に触らないでっ!」


甘ったるい匂いで俺を誘いながら、仁愛は俺に嫌悪、拒絶、そして絶望、敵意の匂いを放っている。


俺のよりもさっきの奴らのほうがよかったって言うのか。

ふざけんな。

俺を、本能だけでお前を襲おうとしていた奴らといっしょにすんなよ。


俺は、さっき男が無理やりつかんだ手首に優しく口づけた。