クソッ!

仁愛のフェロモンの匂いがあまりにも薄すぎて、どこにいるのか特定できない。


「仁愛、いったいどこに行ったんだよ……」


わずかに香るΩ(オメガ)のフェロモンの匂いを頼りに、必死で仁愛を探していると――突然、α(アルファ)を誘う強烈な甘ったるい匂いが漂ってきた。


この匂いは、間違いなくΩ(オメガ)のフェロモンだ。

でも、その中に嫌悪(けんお)と拒絶の香りが()じっている。


まさかっ!


匂いのする方向へ急いで向かうと、中庭にたどり着いた。
そこにいたのは、仁愛とふたりの男だ。


「イヤッ! 離してっ!」

「へぇー、抵抗するんだぁ」

「そういうの、逆に興奮してくるんですけどっ!」


ひとりの男に両手をつかまれ、必死で抵抗する仁愛。

その反動でメガネが地面に落ちると、仁愛の本来の姿が(あら)わになった。



「あぁ……この甘い匂い、ホントにたまんない……」

「ねぇ、これから学校サボって、俺たちといいことしようよ」


――プツッ……。


ふたりの男が我を失っているのは、Ω(オメガ)のフェロモンに当てられているから。

そう頭ではわかっていても、俺の中の何かが完全に切れた。