「チッ! くそっ!」


昨日、俺が仁愛のフェロモンにあてられてラットを誘発させられた。

ということは、きっと仁愛のヒートが極めて近いのだろう。

さらに、美琴と瑚依の手によって、仁愛は本来の姿――つまり、Ω(オメガ)そのものに戻っている。

たとえβ(ベータ)に擬態していたとしても、無意識のうちにΩ(オメガ)のフェロモンをまき散らしている状態だ。


このままだと、仁愛はβ(ベータ)に狙われる恐れがある。

これは、一刻を争う事態だ。


「今すぐ仁愛を連れ戻さないと危険だっ! 仁愛を探しに行ってくる」


みんなにそう言って、俺は急いで講堂をあとにした。