「――待てっ!」
仁愛のところへ行こうとする瑚依と美琴を引き止めた。
「豹くん、どうしたの?」
「仁愛のフェロモンが……消えかかってる」
俺の言葉にみんなが「えっ!?」っと驚きの声を上げる。
「豹、それってどういうことなの?」
「おそらく、俺たちと別れたあと、仁愛はβに擬態したんだろう」
「せっかく美琴ちゃんと瑚依ちゃんが仁愛ちゃんを本来の姿にしたのに……なんでまた?」
「……俺から逃げるためだ」
「仁愛ちゃんは豹くんの運命の番なのに、どうして?」
緊迫した空気に包まれる。
本当は仁愛をひとりにさせるつもりなんてなかった。
でも、仁愛のフェロモンからはっきりと感じた、俺への拒絶。
その気持ちを取り除けるなら――そう思って、あえて仁愛をひとりにした。
今、仁愛が俺を拒んでいたとしても、運命の番であれば、アイツは最終的に俺のもとに戻ってくる。
そう確信していたから。
でも実際は、そうじゃなかった。
仁愛は俺から逃げるチャンスをずっと探っていた。
それが今だったんだ。