『――私、化粧室に行きたいんですけど……』


仁愛がそう言って、俺たちと別れてからだいぶ時間が経った。

でも、まだ仁愛は講堂に来ていない。

そろそろここに着いてもいいはずなのに……。


「仁愛ちゃん、遅いね。迷ってないかな?」

「化粧室からここまでそれほど遠い距離じゃないから、そんなことはないと思うけど……」


仁愛を心配する瑚依と美琴。


「みこちゃん、仁愛ちゃんの様子見に行ってみる?」

「そうだね――」


ふたりに仁愛のことを任せようとした――そのとき。

さっきまで強かった仁愛のフェロモンが急に弱まったのを感じた。