「仁愛、俺はさっきの奴らとは違う――」


そのまま野獣様は私の手を取り、それを彼の両頬へと導く。


「――だから、俺だけを見て。俺だけを感じろ」


熱を帯びた瞳が私をまっすぐに見つめる。

一刻も早く、この男から離れたいのに……。

野獣様が私の手を自分の顔に押し当てていて、離れることができない。


「イヤ……ッ!」


自分が自分じゃなくなるような感覚が……怖い。


「仁愛、本能に(あらが)うな。余計に苦しくなるだけだ」


野獣様の額が優しく私のそれに優しく触れた。

そのせいで、野獣様との距離がさらに近づく。


「仁愛、大丈夫だから。本能の(おもむ)くままに、俺のことを欲しがれよ」


冗談じゃないと、そう言って(こば)みたいのに……。

そんな物欲しそうな顔をして、甘い言葉を口にされたら……。

私はこの男に(あらが)えない――。


とうとう本能に逆らうことができず、私は自分から野獣様に抱きついた。