「仁愛……っ」


甘い声で名前を呼びながら私を抱きしめる野獣様。

その瞬間、心臓が激しく脈を打ち、体は火照って汗ばむ。

呼吸をするのも苦しくなって、立っているのがやっとだ。

昨日のように、再び目の前の男を求める体。

野獣様の甘ったるい匂いに()まれそうになる。


「イヤッ!」


わずかに残った理性で、野獣様の体をドンッと押し返す。


「もう誰も私に触らないでっ!」


この男の前でだけは、自分自身を見失うわけにはいかない。


でも、相手は野獣様。

聞く耳を持たずに、さっき男子学生が無理やりつかんだ私の手首に優しく口づけた。