「ねぇ、そこのキミ!」


背後からひとりの男子学生に声をかけられた。

ふり返ると、隣にはもうひとり男子学生が。

彼らは不審(ふしん)な笑みを浮かべている。


「キミ、とても地味なのに、めっちゃいい匂いするね」

「ねぇねぇ、何年何組? どこの家の子なの?」


地味子の私に話しかける人なんて、今までいなかったのに。


「すみませんが、あなたがたにお答えすることは何もありません。失礼します」


こう言っておけば、これ以上(から)まれることはないはず。

ホッと小さく息を吐いて、彼らのもとを去ろうとすると――。


「ちょっと待ってよ」


突然、ひとりの男子生徒が私の腕をつかんだ。
 

「俺たちを誘うような匂いをさせておいて、つれないなぁ」

「イヤッ! 触らないでっ!」


手を振り払おうとするも、彼はさらに強く私の両手をつかむ。


しまった!

このままじゃ、逃げられないっ!

必死に抵抗していると、勢いでメガネが落ちてしまった。