「すぅー……はぁー……」


周囲を見渡して追っ手がいないことを確認してから、大きく息を吐いて呼吸を整える。

野獣様たちから無我夢中で逃げた先は、噴水のある中庭だ。

ここまで来れば、大丈夫かな?


幼いころから本を読むことにしか興味を示さなかった私は、両親に心配されて、半ば強制的に運動をさせられていた。

そのおかげで体力がついて、つきまとう男の子たちから逃げているうちに逃げ足が速くなったんだ。

ベストタイムは、確か……50mで7秒台だったっけ。


とはいえ、4人とは同じクラスだから、逃げたところで安心はできないんだけど……。

とりあえず、全校集会が終わるまでここで待機しておこう。


噴水の近くにあったベンチに腰をかけて、制服の中に忍ばせておいた本を取り出して読み始める。

しばらくページをめくっていると、誰かが近づいてくる足音が聞こえた。