「お前が地味な格好をするようになったのは、無意識にΩ(オメガ)であることを隠すためだったんだろう。仁愛の両親がβ(ベータ)だから、仁愛は完璧にβ(ベータ)に擬態できたんだ。お前の素顔がわからなかったら、俺もお前がΩ(オメガ)だって気づかなかった」


本当は否定したい。

だけど、私の第二の性は、今まで読んだ第二の性の文献や書物、今までの野獣様の話――どれをとっても、Ω(オメガ)にたどり着いてしまう。


「でもっ! 私がΩ(オメガ)だったとして、私の運命の番はあんただけとは限らないでしょ? だって、あんたのほかにもα(アルファ)はいるんだから」


たとえば、大牙くんもα(アルファ)なら、私の運命の番に該当(がいとう)するはずだ。


「それは絶対にない」


野獣様がはっきりと言い切る。


「どうして?」

「運命の番は、世界中どこを探しても“たったひとり”しかいないからだ」

「運命の番は、“たったひとり”だけ……?」

「そうだ。そして、その相手を逃さないようにするために、Ω(オメガ)はヒート中に大量の誘発
フェロモンを無自覚にまき散らして、α(アルファ)のラットを誘発させる」


――ドクッ……。


昨日バラ園であったことを思い出して、心臓がイヤな音を立てる。