「何言ってるの! むしろ、その逆よ!」
「みこちゃんの言う通りだよ! 地味子でいるなんてもったいない!」
「は、はぁ……」
予想もしなかったふたりの反応に圧倒されていると、狛犬さんは私の髪にシャンプーを、兎野さんは私の顔にマッサージを始めた。
「髪は絹みたいにサラサラで、艶もコシもしっかりあるし!」
「肌だって、ハリがあってツヤツヤだよ!」
「そ、そうですか……」
自分ではよくわからないけれど……。
それよりも、ふたりの手際がまるでプロだ。
「あの……どうしてふたりはこんなにも手慣れているんですか?」
「私とこよは、中等部からここで学生相手に実践を積んできたからよ」
話によると、狛犬さんの家はヘアーメイクとネイルサロンの事業、兎野さんの家はリラクゼーションの研究でエステやマッサージなどの事業をしているらしい。
「そんな時期から……すごい」
それが理由なら、納得がいく。
子どもが親御さんの職業に興味を持つのは、ごく自然なことだ。
でも、社長令嬢ともなると、半ば強制的にやらされることもあって、逆にイヤになる場合もあると聞くけど。
ふたりは、自分たちの家業を心から楽しんでいるように見える。
「ちなみに、この場所は小等部を卒業する前にみこちゃんと理事長にお願いして作ってもらったの」
「へ、へぇ……」
生徒の願いを叶えるなんて、この学園の理事長は太っ腹だなぁ。