「さてと、さっそく始めますか」

「うん! 仁愛ちゃん、こっち来て!」


彼女たちはおたがいの顔を見合わせると、兎野さんは私の手を引いてバーバーチェアに座らせた。


「あの……これからいったい何が?」

「私とこよで、仁愛が持っている本来の素質を引き出してあげるのよ」


私が持っている本来の素質?

狛犬さんが言うそれは、いったいどういう意味なのだろうか。


「ということで、メガネはこっちで預かるね」

「あ、ちょっと!」


(なか)ば強引に、兎野さんからメガネをとられてしまった。


「嘘っ……これが仁愛ちゃんの素顔なの?」

「仁愛、あんた……」


私を見るなり目を丸くする兎野さんと狛犬さん。


「おふたりの美貌(びぼう)と比べられても困りますよ」


基本的なお手入れはしているけれど、彼女たちのようにお金をかけて努力しているわけではないから、比較(ひかく)されると返す言葉もない。