「確かに! 俺も昨日仁愛ちゃんの素顔を見たけど、まちがいなく“β”のものではなかったよ」
大牙くんまで……。
きっとご令嬢たちに言ったら黄色い声を上げて大喜びするだろうけど、私は全然うれしくない。
まだ冷やかしてくれたほうがマシだ。
「へぇー、豹と大牙がそこまで褒めるなんて。ずいぶんと磨きがいがありそうじゃない」
「うんうんっ! なんてったって、仁愛ちゃんは豹くんの“運命の番”だもんね!」
狛犬さんも兎野さんも乗り気だ。
私はβなのに……。
でも、反論したところでもっと厄介なことになりそうだったので、黙っておくことにした。
「じゃあ、美琴、瑚依。仁愛のこと、あとは任せた」
「仁愛ちゃん、またあとでね!」
野獣様と大牙くんは私を残して、この場をあとにした。
「ちょ、ちょっと!」
まだここで何をするのか聞いてないんですけどっ!