「あの……どうしてふたりとも私の名前を?」
「それはね、私たちも仁愛ちゃんと同じクラスだからだよ」
兎野さんの言葉に、思わずゲッとする。
ふたりも同じクラスだったのか……。
どうやら、彼女たちも野獣様とつながっているらしい。
それなら、私が一般人だと知っているのも頷ける。
でも、私の生い立ちを知っているのなら、彼女たちにとっても私と関わるメリットがあるなんて思えないけど……。
「本当に、どこからどう見てもβにしか見えないわね」
狛犬さんの意味深長な発言が引っかかる。
私はれっきとしたβなのですが……。
「確かに、今の仁愛は“βに擬態してる”からビミョーだけど――」
今、野獣様にサラッとヒドいこと言われたな。
「――仁愛の素顔を見たら、度肝を抜くから楽しみにしとけよ」
なぜか誇らしげに言う野獣様に、背筋がゾクッとした。